【Review】sonible「prime:vocal」レビュー(ディエッサーやノイズリダクション機能を搭載したAIボーカルプロセッサー・機能と使い方・評価)



【Review】sonible「prime:vocal」レビュー(ディエッサーやノイズリダクション機能を搭載したAIボーカルプロセッサー・機能と使い方・評価)

メーカーによる一次情報

インテリジェントなボーカルエンハンサー
prime:vocal を使用すると、録音環境に関係なく、世界クラスのスタジオ品質のボーカルを実現できます。スタンドアロン ソフトウェアと ARA プラグインとして利用できる prime:vocal には、理想的とは言えない状況で録音されたデモ スケッチやボーカルを、ミキシングやマスタリングに適した商用標準のオーディオに変換する機能が満載です。

ボーカルに特化したAI技術
簡単なボーカルクリーンアップとノイズ除去
数秒でスペクトルバランスとダイナミクスを強化
雑音を消し、声を増幅する

ポストプロダクションで憧れのスタジオサウンドを実現します。

あなたの声を、妥協することなく、最前面に。

prime:vocal を使用すると、ボーカル録音をプロのスタジオで録音および処理したかのように聞こえさせることができます。人工知能とトレーニングされたオーディオ プロセッサの作成における当社の長年の経験に基づいて、prime:vocal はボーカル オーディオ用に特別に開発されました。

prime:vocalを使用して

  • ラフなボーカル録音をプロフェッショナルなサウンドに変える
  • リバーブを除去し、未処理の空間で録音する
  • 電気的または機械的なノイズに悩まされている録音を修復する
  • 携帯電話で録音した音声の品質を向上させる
  • 外出先や外出先でボーカルを録音し、プロの水準に引き上げます
  • AIによるディエッシングで歯擦音を抑える
  • 過度に大きな音やブーミーな「Puh」音を簡単に除去します
  • プロが録音したボーカルのスペクトルプロファイルを実現
  • ボーカル録音を修復するためのADRにかかる時間と費用を節約
  • 強化と向上 - すべて 1 つのツールで

ノイズのない自然なボーカルを実現する業界最先端の技術

ボーカル トラックをミキシング用に準備するためにさまざまなツールを使用する手間が省けます。prime:vocal は、バズ音、機械音、反響音、強調されすぎた歯擦音や破裂音などのアーティファクトを簡単に除去します。prime:vocal の AI を活用した処理により、1 つのツールで最高のクリーンアップと強化が実現し、いつでもスタジオ品質のボーカル オーディオが得られます。

プロフェッショナル、アーティスト、そしてクリエイティブ志望者のための完全なパッケージ

プロフェッショナルなサウンドは細部に宿る

創造力が要求されるものの、時間とスペースが理想的でない場合でも、prime:vocal の機能により、ボーカル トラックで最高水準を達成できます。ボーカル録音を強化するための新しい頼りになるツールは、ダイナミクス、平均音量、スペクトル バランスも最適化し、頭の中にあるものに合わせて各プロセスの強度を調整することもできます。

扱いが簡単で、素晴らしい結果が得られます

外出先でボーカルを録音して輝かせましょう

リハーサル ルーム、ホテルの一室、または自宅のアパートなど、どこにいても、外出先でボーカルを録音し、ミックスを始める前に prime:vocal に通してみましょう。このような優れたベースを使用することで生じる違いに驚かれることでしょう。

prime:vocalの使い方は?

  • prime:vocal をスタンドアロンソフトウェアとして開くか、または対応している DAW で ARA プラグインバージョン (ベータ版) として開きます。
  • 生のボーカルやスピーチの録音をprime:vocalに読み込みます
  • AIシステムが分析プロセスを開始するのを見る
  • バックグラウンドで分析が実行され、セクションごとに強化効果が聞こえます 5. 微調整のためにパラメータを調整します
  • スタジオ品質の録音をエクスポートする
プロフェッショナルなスタジオがありませんか? 問題ありません。prime:vocal は、ボーカル録音をプロフェッショナルなレベルに引き上げるインテリジェントなパワーハウスです。


公式サイトの製品ページでは各製品の無料試用ができるので、動作確認をお勧めします。

機能と使い方

ここからは機能や使い方を中心にソフトウェアについて他社製品との比較を交えつつ中立的な立場から分析、批評を進めていきます。筆者はBtoBのボーカルエディットに携わっている立場の人間でもありますのでこれまで使用している製品との差分や商業的な観点からも考察していきます。(逆に歌ってみたなどのプライベートな録音環境等での制作に関してはさほど携わっておりませんのでバイアスとして踏まえた上で読んでいただけるとしっくりくるかもしれません。)
sonible「prime:vocal」は生録音されたボーカルをミックスに最適なボーカルに整える仕込みを行えるソフトウェアおよびARAプラグインです。ボーカルのダイナミクスやスペクトラルバランスを調整するだけでなく、その前の段階のフロアノイズ処理などもこのソフトで行うことができます。
注意したいのは通常のプラグインとして使用するものではないということ。基本はスタンドアロンのソフトウェアです。また、もう一つのオプションとしてベータ版が用意されているのもARAなのでインサート方式の通常のプラグインではないことです。MelodyneののARAのようにオーディオファイルに対して直接処理を行います。そのため、インサートエフェクトではなくiZotopeのRXスタンドアロンをおおまかにイメージするとピンとくるかと思います。使い方は非常にシンプル。まずオーディオをインポートして解析します。これが結構な時間がかかり、オーディオにもよりますが60秒のオーディオに対し60秒の解析がかかったりします。オーディオの部分的解析は現状できないようです。これはストリーミングの部分解析ではなくオーディオファイル全体を解析し、複数のパラメータを全て設定することにも起因していますが、最新のiZotope Ozoneよりも体感として時間がかかる印象です。


解析が終わるとノイズリダクション、フロアノイズのリダクションやダイナミクスなどの5つのそれぞれの処理に関するパラメータを自動設定します。モジュールの並び順に信号が追加します。そして、それぞれのモジュールは基本的に独立しており(相互作用などは基本的になし)、Vocal Clean-upとDe Reverbモジュールはノイズ処理の通常のプロセスを想定してノイズリダクションモジュールによりノイズ処理された信号を前提に設計されています。これは音声処理のプロセスから鑑みても自然です。これらのパラメータは後でいじることが可能。もちろんセッションの保存もできます。それぞれの処理についてみていきましょう。ボーカルのディスプレイはRXと同様にズームできたりします。後述のオートメーションもズームに伴い位置が連動します。

ノイズリダクションはいわゆる収録時のルームノイズを抑える処理です。大前提として音声スタジオで収録しても一般的な部屋で収録しても多かれ少なかれルームノイズの処理は必須でノイズリダクションにより失われるルームノイズ以外の成分をどれだけ最小限にするかが重要であるということは言うまでもないですが、このプラグインの場合ノイズリダクションの量を1ノブで調整できます。オーディオ処理はルームコンディションによって異なることは言うまでもないですが、筆者の手元にある録音スタジオで収録したいくつかのファイルで確認したところ解析後のデフォルトの設定でもルームノイズが過不足なくちょうどよく低減できる印象で及第点な結果が得られることが多く非常に優秀です。(そのままの設定でも商業的にも問題なさそうなレベルだと思います。筆者はよくRXでルームノイズ成分のプロファイルを取得して、RXでフロアノイズを取ることが多いですが、RXは設定パラメータが多く悪いコンディションのオーディオでよりノイズリダクションが必要な場合ではボーカル成分を過剰に失うことのないように微調整が必要で非常に神経を使うかと思います。ノイズが多い部屋の収録を処理する場合思っている以上にボーカル成分にも干渉するわけで、設定によってはここで事故音源につながる可能性ももちろんあります。これが非常にシンプルな操作に置き換わっているのは便利で実用的だと思います。
筆者もそうですが細かい微調整がさらにしたい人向けにさらに自分で区分した3バンドでそれぞれのエフェクト量を調整することによって女性ボーカル男性ボーカルの周波数の違いなどによる信号の分布に応じて自分でカスタマイズすることも可能。また、このプラグイン全体に言えることですが、ほぼすべてのパラメータに原音と処理後の成分の違いを聴くDiff機能があるので非常に有能です。また、ノイズリダクション量を時間軸に対応して変化させられるオートメーションが用意されているのも便利。ボーカルが小さい箇所でノイズが気になるところなど部分部分で細かく調整したい人向けです。まあRXの場合は破壊的処理で部分部分を処理できるのでこれもまた柔軟性がありますが。全てのパラメータにはエフェクト量全体を操作するオートメーションが備わっています。オートメーションで後から調整できるというのがこのプラグインの一つの大きなポイントになります。



ルームリダクションはDeReverbなど過剰な響きを抑制するパラメータ。これもノイズリダクションと同様ですがやはりソフトウエアが提案したデフォルト設定でも自然なノイズリダクションが行えてよい印象です。


Vocal Clean Upはディエッサーによる歯擦音と破裂音を処理するパラメータ。smart:deessの機能がざっくりと備わっていると考えてみても良いと思います。(smart:deessは周波数を絞り込むなどの機能がありますが、このプラグインではオートメーションで部分ごとに最適な処理を設定できます。)また、上記2つのノイズリダクションモジュールとは異なりVocal Clean Up、Spectral Bance、Dynamicsはそれぞれ同社のsmart:deess、smart:eq4、smart:comp2との類似性や相違点について気になる方もいるでしょう。原理的に言えば、基本的にはそれらのAIについてのアルゴリズムは類似したものが使用されています。しかしながら、オフライン解析かストリーミング方式の解析かという違いにより処理が異なります。(sonible本社に確認済)結論からいうと似たようなものと考えて差し支えないでしょう。
破裂音を処理するのはディエッサーと比べると数が少ないかもしれません。それぞれにはSoft、Medium、StrongのモードとOn Offが用意されており、それぞれの処理の仕方をモード選択で切り替えたりどちらかだけを作動させたりすることもできます。オートメーションがあるので言葉ごとに狙い撃ちして処理することが可能。これはRXや他のディエッサーが搭載されたプラグインと比較して有用性を特に感じさせる機能だと思います。RXの場合声質に応じて選択するディエッサーの全体処理に加えて部分部分のディエッサー処理が場合によっては必要なわけですが、このプラグインの場合全体設定をした後オートメーションカーブで後から非破壊的に処理ができるわけですね。RXの場合直近ではない場合後から処理を遡れないわけで。(バージョン保存はできますが、オートメーション処理で細かいところを後から部分を調整したり戻せるのはRXより簡単で一定のアドバンテージを感じます。)後優秀な機能としてはノイズ処理される部分がリアルタイムで色付きで表示される機能。モード変更でも変化するので処理しすぎなのかどうかが視覚的に一発でわかります。サ行でないのに処理が過剰におこなわれているなど。
スペクトラルバランスは声のスペクトラルバランスを設定してトーンを変えるパラメータ。ここからはミキシングにもより大きくかかわるパラメータです。これはオートメーションが用意されているのみです。ボーカルとスピーチモードの選択に加え、それぞれ高音用、低音用が用意されています。それぞれのモードにはこれのトーンのBright、Neutral、Warmが用意されていてメイン画面のワンノブで調整します。ダイナミクスも同様でレベリング(ボリュームコントロール)がSoft、Medium、Strongの3つのモードが用意されていて、コンプレッションモードもSoft、Medium、Strongが用意されています。コンプレッサーをOffにすることも可能。オートメーションがしっかり用意されているところも良い。後筆者としてわかりやすいと感じるのはスペクトラルバランスとコンプレッサーのモードやエフェクト量を変えるとリアルタイムで波形が変化します。コンプレッションで波形が丸くまあこれはお分かりの通り目安以上のなんでもないのですが、不思議な安心感があります。

評価

ピッチ補正ではなく(Melodyneなどがありますね)その他の全体的なボーカルエディットができるソフトウェアというとRXがありますが、このプラグインはボーカルに特化して音声やボーカルのみしか処理できません。しかし、他製品だと時間がかかる処理がモードの選択で簡単に選択して調整できたり、異なるアプローチで可逆的に調整ができるので柔軟なワークフローを可能にする点だけでも十分すぎる差別化を感じます。スタンドアロンに関していうならば非破壊処理というところも大きな違いです。これはこのプラグイン設計の根幹にかかわる話ではありますが、この5種類のエフェクト処理をリアルタイムで自在に行き来できるのは他のソフトウェアには難しいかもしれません。もちろんボーカル処理のワークフロー自体は一般的に知られた合理的な流れがいくつかありますが、問題解決の際にそれぞれの処理に干渉する領域はもちろん少なからずオーバーラップするわけですね。
通常の処理でうまくいかない時にその都度複数の工程を見直せるわけですね。オートメーションのポイント設定の操作が若干気になるところではあり、数値設定できない(?)などDAWと比べて操作がもう少し柔軟になってくれるとうれしいですかね。
モジュールの中で特に便利だと感じるのがディエッサーでしょうか。オートメーションで後から調整できるのも良いところ。また、ノイズリダクションも元々の処理精度自体のポテンシャルが高いと感じるので精度と手軽さを併せて柔軟性と天秤にかけるならば合格点と感じる方も多いと思います。とはいえノイズリダクションのバリエーションはRXの方が多いことは確かなので特殊なノイズ処理はやはりRXが必要で併用するとは思いますが。後カットなど基本的な操作やスペクトラルリバランスやRXモジュールでは最適な処理ができない処理は問題のあるスペクトラルの部分を限定的に手作業で処理するわけでもちろんRXの出番です。
prime:vocalはより全体的な、それでいて全体の品質に関わる処理を担当するわけで、とりわけナレーションなど長い尺の処理などを行う上ではこうしたボーカルの下処理に特化した設計は便利なのではと思ったりします。RXと併用するのももちろん良いですし。バンドごとに確認できるDiffがやはり便利でRXでももちろんノイズリダクションされた信号を確認しながら注意して作業するわけですが、より細かくリアルタイムでいじって調整できるので気に入っています。
また、ボーカル自体の性質を調整するダイナミクスやスペクトラルバランスに関しては特にボカロP、アーティストなど作曲にもかかわって楽曲を制作の方にとっては限られたモード設定やオプションを選択し、アルゴリズム依存で割り切って声の方向性を定めていくという効果的に設計されている方がかえって使いやすさを感じるのではと感じたりします。余計な処理を行ってかえってオーディオ品質を損なってしまうという方にとっても使いやすいかもしれません。
このプラグインでは細かいEQ設定やコンプレッションの速度の設定をすることはできずボーカルに最適化したアルゴリズムに依存していますが、ボーカルミックスの下準備ということを考えるのであればむしろ合理的です。総じてそれぞれのモジュール自体は同社の既存の製品を反映させたもので全く新しいというわけではないかもしれませんが、前述のようにこれらの処理を自由自在に行き来し、複合的にボーカルを吟味でき、設計自体に一定の新しさを感じさせるものであり堅実に設計されている印象を受けました。

公式サイト

セール情報

発売記念としてセール実施中です。また、試用もできるのでチェックしてみることをお勧めします。




 

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