【Review】Audible Genius「Syntorial 2」レビュー(シンセサウンドデザインのための耳を鍛えるトレーニングソフトウェア、内容・評価)
機能と使い方
Audible Genius「Syntorial 2」はチュートリアル機能が搭載されたシンセサイザーで、アプリケーションとして基本的にはスタンドアロンで立ち上げます。通常のシンセとして使用することもできるようです。
形式としてはひととおり一般的なシンセサイザーのパラメータが用意されたSyntorialシンセサイザーを使用板チュートリアルの後にSyntorialシンセサイザーを使った課題クイズが搭載されており、実際に操作することで各パラメータの使い方を習得することができます。具体的にはどのようなクイズかというと鳴らされた音と同じ音が鳴るようにシンセサイザーの設定をして(もちろん鳴らされている音の設定は見えません。)設定が一致しているかチェックするものです。
また、最近日本語に対応して日本語で使用することが出来るようになりました。これについては後述します。まずはバージョンアップによる新機能について確認していきましょう。ちなみに筆者はバージョン1から使用しています。
Syntorial 2の新機能について
Syntorial 2.0 の新機能は何ですか?
大きな2.0 アップデートでは、いくつかの大きな変更が加えられています。
真新しい外観
新しい最新化され、完全にサイズ変更可能な ユーザー インターフェイスをぜひご覧ください。
ビジュアライザー
エンベロープ、LFO、フィルターがリアルタイムでどのように機能するかを示す直感的なビジュアルアニメーションであるVisualizerを使用すると、モジュレーションを簡単に学習できます。
LFOやエンベロープの線が表示されるようになったことでより現代のソフトウェアシンセサイザーの機能と共通する操作で学習できるようになりました。
新しいビデオ
すべてのビデオ デモンストレーションは、ペースが向上し、 Joe Hanleyによる対面でのガイダンスが追加されて再作成されました。フィルター エンベロープなどの特定の困難なトピックは、より詳細と洞察を加えて再考されました。また、より多くのパッチ タイプと微妙なサウンド デザイン テクニックに触れる新しい情報がOn Your Ownビデオに追加されました。
コンテンツも見直しと追加されました。
微妙なスコアリングと再マップされたパラメータ
新しいオレンジ色は、スコアリング システムに繊細なレイヤーを導入し、より現実的なフィードバックを可能にします。また、微妙すぎて聞き取れない違いを避けるために、いくつかのノブとスライダーの固定値が再マッピングされています。これら 2 つの新機能を組み合わせることで、より一貫した進歩とイライラを軽減しながらコースを進むことができます。
これはこの中のアップデートの中ではかなり重要なアップデートだと思います。実はバージョン1の場合、グレードが上がってくると鳴らされた音に対応するノブを正確に合わせるのが困難と思われるような微妙な調整が必要な課題がいくつかありました。(バージョン1では設定がひとつずれているもののどう聞いても鳴っている音に有意な違いはみられずほぼ同じといったものがありました。筆者の訓練不足かと思ったりもしたのですが、やはりそういったものがいくつかあったようですね。)それは学習において本質的ではないということで見直しが入ったものがあるようです。
短いグループチャレンジとボーナスラウンド
コースを進めるのに役立つように、グループ チャレンジは6 つのパッチから 3 つのパッチに短縮されました。まだ残りの 3 つが必要ですか? オプションのボーナス ラウンドを入力します。さらに練習したい場合は…
ランダマイザー
ランダマイザー モードでチャレンジを開始すると、Syntorial は再作成できる新しいパッチをランダムに無限に生成します。もっと練習が必要ですか? 古いチャレンジに戻って見直す必要がありますか? ランダマイザーがあなたをサポートします。
課題をランダムで行うモードも追加。
その他詳しい内容は製品ページも確認してみてください。
アップグレードに関しては公式サイトにログインをしてアップグレード資格を確認します。(クーポンコードは対象外です。)
公式サイトはこちら。
日本語対応について
アップデートでAudible Genius「Syntorial 2」は日本語に対応したとのことですが、正確に言うと動画の日本語字幕と表記が日本語で表示できるようになったということです。チュートリアルの動画自体は英語で話していますが、リアルタイムで字幕が出ます。(現状日本語と英語から選択可能)これは英語のニュアンスも確認したい人にとってはなかなか良い設定だと思います。翻訳の精度に関して言うと格別優れているという印象もありませんが、内容がわからないというものも少ないように思います。悪くないといったところ。課題のタイトルは翻訳によって若干わかりにくいかもしれませんがまあ些細なことでしょう。ちなみにSerumなどのダウンロード形式のボーナスパックは翻訳はないようです。
さて使い方に行きましょう。
Syntorialはアプリとして立ち上げるとユーザー名を入力します。これはゲームでおなじみのゲームデータを複数保存できる仕組みです。ちなみにスタンドアロンでシンセサイザーを立ち上げるモードも用意されています。プリセットが用意されていて単なるチュートリアルシンセというだけでなくなかなか完成度の高いものも結構あります。
順番通りに進めるようになっていますが、特定の後の方の課題をやりたいときはアンロックを押すとその課題を先に実施することもできます。
さて最初はノコギリ波とパルス波。翻訳は関心出来るものもありませんが、ガイドにはなるので悪くないですね。難易度としてはシンセサイザーについて本当に全く知らない人が始められるようになっています。最後の方まで進めると自分でサウンドデザインできるレベルまで到達できるようにステップバイステップ方式になってます。
フィルターのキートラッキングなど少し踏み込んだ内容もあります。このチュートリアルの評価できる点として非常にチューターの生の声が反映されているところです。Youtubeのプロデューサーのコンテンツのようにプロの技をお見せしますといったようなクールに見せようといったショウマン精神といいますか、コンテンツの見栄えをよくしていると思うところが少なく、率直な意見がそのまま反映されていて共感が得られるニュートラルで真摯な解説になっていると思います。
評価
非常に良く練られた学習内容で完成度の高いアプリケーションだと思います。何が優れているのかといえば、多くのシンセサイザーを一般化したSyntorial独自のシンセサイザーで説明しているので汎用性が高く、特定のシンセサイザーではなくシンセサイザー自体のスキルを身に着けられるという点です。また、チュートリアルの後すぐにその内容をチェックするクイズが用意されているので学習の流れに無駄が一切ありません。また、コンテンツの並び順も実は結構重要なのですね。なんとなくではなく体系的。
これは単に入門向けというだけでなく、さらに能力を向上させたいと思う人にとっても収穫のあると思われる内容です。というのも単に操作方法だけでなく、設計者でありチューターによる価値観がチュートリアルの中で述べられており、客観的な操作方法や音響的な知見だけでなくこうした方が良い、こうだと思うというtipsや考え方が非常に刺激になるものがあります。コンテンツもボリューミーで連続して進めても(リリースされたゲームの1日で終わらせるように?)、数日で終わるようなものではなく充実しています。シンセサイザーのチュートリアルはYoutubeなどで量産されていますが、内容が怪しい(?)ものや包括的というよりもティップスに留まるものも多く、一般化されたシンセサイザーの教育として体系だったものは現状ほとんどないと考えてます。今後のアップデートも楽しみです。
Syntorialのレビュー(前のバージョンの内容です。)
下記Synntorial 1時の情報及びレビューをそのままアーカイブとして残してあります。
メーカー情報
Syntorialはビデオゲームのようなトレーニングソフトウェアで、シンセパッチを耳でプログラムする方法を教えてくれます。ビデオデモンストレーションとインタラクティブなチャレンジを組み合わせた約200のレッスンで、組み込みのソフトシンセでパッチをプログラミングする体験を体験し、自分のサウンドを簡単に作成するために知っておく必要のあるすべてを学びます。Syntorialは、シンセプログラミングがどのように機能するかを示すだけではありません。ビルトインシンセにパッチをプログラムする必要がある129のインタラクティブチャレンジに参加します。あなたはサウンドのデザイン方法を学ぶだけでなく、サウンドデザイナーになりつつあります。
特徴
- 129の課題-やって学ぶ!Syntorialの組み込みシンセを使用したプログラムパッチでチャレンジを完了します。
- 706パッチ-プログラム、プログラム、プログラム。結局のところ、それがすべてですよね?最終的には、単純なものから複雑なもの、なじみのあるものから奇妙なものまで、700を超えるパッチをプログラムすることになります。
- 33 ON YOUR OWN-Syntorialは、使用するシンセを使用して、自分で実行する定期的なタスクを提供します。
- 147ビデオ-チャレンジで使用するのと同じシンセを使用したビデオデモンストレーションを通じて、すべてが教えられます。
- 64シンセパラメーター-Syntorialは、ほとんどのシンセに見られる最も一般的なパラメーターをカバーしています。
- 39クイズ-学習したことすべてを保持して覚えておくのに役立つ多肢選択式の質問
- 一度支払うと、Mac、PC、iPadの3つのプラットフォームでSyntorialを入手できます
引用元:Syntorial
内容紹介
Syntrialにはソフトウェア内にチュートリアルと課題が内蔵されています。まず、各パラメータの説明や操作方法・具体的な使い方について説明が入った後、レファレンスのサウンドと同じサウンドを作るといった課題が用意されています。シンプルにオシレータの各ウェーブの音判定から始まり、少しづつパラメータが増えていきます。複数のノブをいじって作るサウンドを作るといったように課題が難しくなっていきます。パラメータはいわゆるソフトシンセ特にアナログシンセでおなじみのものが用意されています。
そして、このソフトウェアにないパラメータを持つシンセを学習できるように追加のレッスンパックも大量に用意されています。このソフトウェアではカバーしきれないSerum等の複雑なモジュレーションのできるシンセをカバーできるようにしているということですね。
英語が苦手な人は使えるのか?
このソフトウェアは英語でチュートリアルが用意されています。また、英文の問題も用意されています。
そのため、気になるのが全く英語がわからない(聞き取れない)人が使うことができるのかということかと思います。結論をいうならば、音を鳴らしながら説明してくれているので、基本的に何をしているのかわからないということはまずありません。雰囲気で進めることができるので、課題に取り組んでいるうちに身に着けることができます。そうはいうもののチュートリアルの最中に結構サウンドデザインのコツといいますか、大事なことを言っているのも確か。筆者が聴きとった限りだと、いくつか内容が聞き取れればより良いかもしれませんね。
PC上の音声入力からGoogle翻訳にかけてしまう手もありますので全く問題ないかと思います。
こちらのページでも言及されています。
評価
Youtube等で主要なシンセの使い方のチュートリアルは飽和状態にあると思いますが、このソフトウェアでは使い方よりもむしろイヤートレーニングに重点が置かれています。サウンドデザインのセンスを磨く上でこのソフトウェアのプログラムは大変効果的にメニューが用意されています。作りがごちゃごちゃしてしまうことが予想されるのとライセンス等の関係から実現は難しいとは思いますが、最近のソフトシンセの主要パラメータはシンセに用意してもらえるとなお良しでした。(おそらく、一番の理由は課題設定が現実的に不可能なのでしょう)
独学でなんとなくシンセを使ってきてはいるものの、もっと使いこなせるようになりたい、一から思いのままのサウンドを作れるようになりたい、きっちりと基本を固めていきたい人にはうってつけのソフトではないでしょうか。
追記:現在最安セール行われています。
また、このソフトウェアをリリースしているAudible Geniusは作曲のトレーニングアプリ「Building Blocks」もあります。(こちらはオンライン上のアプリケーション)
こちらも大変質が高く、最近Level2もリリースされましたので初心者から上級者まで鍛えることができます。