【Review】Sonimus「A-Console」レビュー(アメリカ製ハードウェアコンソールに基づくコンソールエミュレーションプラグイン・機能と使い方・他製品との比較・評価)
製品情報
A-Console は非常に強力なソフトウェア エンジンを提供し、完全な 3 次元サウンドを追加しながら、パンチ、滑らかさ、明瞭さを即座に追加します。すべての単一チャンネル トラックおよびバス グループで使用することを意図したこのプラグインは、巨大なサウンド エンハンスメント機能、直感的な GUI、および古典的なヴィンテージまたはモダンの間の 2 つのクロストーク モードを保証し、あちこちで微妙な微調整を行って、明確なヴィンテージまたはモダンな音質を実現します。このプラグインは、最も人気のあるアメリカのハードウェア コンソールの 1 つの特性に応じて、プロフェッショナルなシェイプと全体的な音質の向上を保証します。
主な機能
- A-Console は強力なソフトウェア エンジンで、微妙にまたは積極的にオーバードライブするバーチャルおよびリアル インストゥルメントにも適用できます。
- PUSH: 信号を制御してダイナミック レンジを縮小するために、よりウォーム/ホットな結果を得るため、または初期のソフトクリップを取得するためにアクティブにします。
- TRIM: GAIN を上げると出力信号が減衰し、フェーダーノブが効果的に「ドライブ」ノブに変わります。
- オプションのステレオ クロストーク機能は、ミックスに深みと立体感をもたらします。「ヴィンテージ」(より明白な効果)、「モダン」(より少ない可聴効果)を選択するか、クロストークをオフのままにします。
- フィルター (ローパスとハイパスの両方) は、楽器、人間の声、雰囲気音、FX などのために設計された甘いサウンドの音楽フィルター カーブです。
- グローバル サチュレーション バイパス (BYP) – サチュレーションを無効にして、A-Console をトリミング、減衰、およびメータリングの目的で使用できます。グループ化されたすべてのインスタンスに飽和をバイパスします。このコントロールは、グループ化されたインスタンスにのみ影響します。インスタンスが「グループ化されていない」場合、飽和はバイパスされません。
- オーバーサンプリング – プラグインは、オーバーサンプリング機能が不要になるように細かく設計されています。ただし、A-Console を使用して極端な飽和を実現したい場合など、オーバーサンプリングを使用すると非常に便利な場合があります。元のオーディオ サンプル レートの 2 倍から 16 倍の処理を選択して、エイリアシングの可能性を排除します。
- グループ化: チャンネルとバスの制御がこれまでになく簡単になりました。A-Console では、理想的な同時制御のために、各 A チャンネル インスタンスをバス グループに割り当てることができます。
- ゼロ レイテンシー*、グループ遅延なし、慎重な最適化 (*オーバーサンプリングがない場合)。
- 内部 64 ビット浮動小数点倍精度。
仕様
サポートされているプラットフォーム
- オーディオユニット、VST 2.4、VST 3、AAX、RTAS。すべてのプラットフォームが 64 ビット操作をサポートします。
サポートされているオペレーティング システム
- Mac OSX 10.9 以降 (インテルおよび M1)。
- Windows 7 以降。
その他詳しい内容はこちらも参照してみてください。
機能と使い方
Sonimus「A-Console」はアメリカ製ハードウェアコンソールのハードウェア特性をエミュレートしたコンソールエミュレーションプラグイン。Sonimus A-Console は、アナログ ミキシング コンソールのワークフローと⾳響特性の両⽅をエミュレートするように設計されています。 A-Console のモデルになったコンソールはAPI 1608 コンソールですが、独⾃の個性を持ち、クラシックな暖かさ、パンチ、⽴体的なサウンドをプロジェクトに反映するようにモデル化されているとのこと。
カテゴリーとしてはアナログコンソールを通して制御する動きをエミュレートするサミングプラグインです。プラグインは1種類のみでプラグイン内で各トラックにインサートするチャンネルモジュールとマスタートラック等にインサートするバスモジュールをプラグイン内で切り替えることができます。
チャンネルモジュールと
各プロジェクトには 1 つのマスター グループのみ使用できます。グループ化を管理するた
めに複数のインスタンスを使⽤すると、競合が発⽣する可能性があるそうです。(仕組みを考えればそうだと思いますが。)各チャンネルモジュールにはハイカットとローカットが出来るほか、クロストークの処理をエミュレートすることもできるのは良い。(効果を切ることもできます。)
クロストークはモダンとビンテージの2種類のオプションが用意されています。
アナログの複数のチャンネルを扱う音響機器で、磁気が漏れて隣のチャンネルの音が聞こえるという隣のチャンネルの音が漏れて聞こえるというクロストーク現象をエミュレートします。トラック間のミックスの馴染みにも関わってくるパラメータ。
Inスイッチが飽和に関わるのでこれを切ると周波数特性はフラットになります。また、PushはWarmとHotとさらにサウンドに癖をつけることができるオプション。Push機能を使うとフェーダーを上下した時に周波数特性に変化と影響を与えます。(Hotの場合フェーダーを上げると低周波数帯域が持ち上がりハイカットになるなど)
サチュレーションも用意されています。総じて言えるのはこれらのパラメータは倍音の付与を含めて非常にさりげない繊細な処理です。ON/OFFを切り替えれば違いはすぐ分かりますが、原音のキャラクターや明瞭度、ディテールが大きく変化したり損なわれることがほとんど感じられません。トランジェントも損なわることがない。これは筆者としては非常に好みです。特に注目は上述のサウンドのエンハンス効果ですが、EQも非常に滑らか。
バスモジュールでは上記のチャンネルストリップのフェーダーやサチュレーションをまとめてコントロールすることができます。サチュレーションスイッチの全部押し等の機能が用意されていたり、トラック名を変える(さらにここで変えるとチャンネルストリップ側でも反映されます)ことができたり、と実用性を疎かにすることがありません。
バスモジュールに並ぶここでのフェーダーはトリムで、グループ内のインスタンスを制御します。このトリムのフェーダーは、各々のインスタンスのフェーダーとは独立しているのがポイント。ここでのInはすべてのバスおよびチャンネル インスタンスの飽和を切り替える機能。それぞれのトラックの設定を一括して制御できるようになっているわけですね。
ます。このコントロールは⼊⼒の微調整に使用することができるわけですが「AS DRV」スイッチに切り替えることで入力コントロールではなくドライブとして使用することもできます。
評価
他製品との比較
同モデルを比較できる対象のプラグインがさほど多くないこともあり、また、A-Consoleは模倣という純粋なエミュレーションという目的で設計されている訳でもないとうことですので、ここではサミングプラグインとして非常にユーザーが多く良く知られているプラグインであるWaves「NLS」と比較してみましょう。
アナログ コンソールは豊かさ、深さ、倍音の複雑さで知られていますが、それは完璧だからではなく、完璧ではないからです。これが、プロのエンジニアがアナログサミングがオーディオにどのような影響を与えるかを尊敬する理由です。そして今、Waves は 3 つの最上級のアナログ コンソールのサウンドをキャプチャするためにあらゆる努力を惜しみません。
何千ものヒット曲を生み出したソリッドステート コンソールが好みであっても、ビンテージの英国真空管のトーンが好みであっても、あるいは「ダークサイド オブ ザ ムーン」の録音に使用されたコンソールが好みであっても、NLS はそれらをマスター ミキサーやマスター ミキサーのコンソールからモデル化して DAW に提供します。プロデューサーはマーク・“スパイク”・ステント(ポール・マッカートニー)、マイク・ヘッジズ(ザ・キュアー)、ヨアド・ネヴォ(シーア)。
こちらは3種類のアナログコンソールが選択できるようになっております。マスターにインサートされたマスターバスに各トラックのチャンネルにインサートされたチャンネルプラグインを送る仕組みやプラグインごとにグループ化できる(8つのグルーピング)も共通ですが、Sonimus「A-Console」とは異なりバスとチャンネル用のプラグインが異なる仕様となっております。
NLSの操作面に関して、細かいことですが、Wavesのマスターバス用のフェーダーが小さい(拡大したとしてもレイアウトでやや気になります。)ので操作面ではA-Consoleの方が使いやすさを筆者としては感じます。また、オリジナルのハードウェアが異なるためというのもあるのですが、Waves「NLS」はどのモデルにも共通していえることですが全体的にドライブ感やディストーションといいますか味付けが非常に濃くコンソールの少し上げるだけでも非常に歪みのあるサウンドが得られることもあり、どちらかというとロックやハードなスタイルにも合いそうな印象があります。
一方でA-Consoleは本当にさりげない飽和といいますか、非常に繊細にアナログスタイルのエフェクトがかかることもあり、まさに原音が活きるという印象があります。そのため、アコースティックの処理やクールジャズ等に特に使っていきたいような自然な飽和が得られます。ざっくりとした雰囲気や傾向としてはWavesのMagma Channel Stripにもやや近いかもしれませんが、それよりもさらに全体的な傾向としては味付けによる明瞭度の高さを筆者としては感じます。(通した時の効果は顕著で制作者であれば誰が聴いても(?)違いが多くの人がわかるものの非常に自然。)アナログ系は筆者も数多くの製品を使用しておりますが、このプラグインは歪みが加わり、アグレッシブにかかるというよりはむしろ録音やミックスをまとめ上げる際のプラスワンとして非常に汎用性があり、様々な制作シーンで長く使える万能ツールとして評価ができると思います。(どちらかというといろいろな製品が既に手元にある人のチョイス、あるいはエンジニア向けかもしれません。)それは全部押しが出来たりとシンプルながらもユーザビリティを想定して設計したと思われるマスターバスチャンネルの機能のUI設計をみても顕著だと思います。(Pushボタンはインサートされたトラックのチャンネルストリップごとに設定するものなのでバスチャンネルのグループごとのチャンネルにはボタンが付いていません。つまり、このボタンはトラックごとに押すことになりますが、これは煩雑なUIを回避するためには設計上ある程度必然かもしれません。)