【Review】iZotope「Nectar 4 Advanced」レビュー(AIアシスタント搭載のボーカルプロセッサー・新機能について・アップグレードすべきか・使い方・評価・セール情報)



【Review】iZotope「Nectar 4 Advanced」レビュー(AIアシスタント搭載のボーカルプロセッサー・新機能について・アップグレードすべきか・使い方・評価)

製品情報

楽なプロ仕様のボーカル
Nectar 4 には、ボーカルのミキシング、制作、デザインのための完全なツール セットが備わっています。一貫性を保つための Auto-Level、ボーカル レイヤリングのための Voices、バックグラウンド シンガーのための Backer、簡単かつ強力な処理のための Vocal Assistant などの新しいモジュールを試してください。強力なプラグインのスイートを解放して、ボーカル サウンドを完全にコントロールします。


あらゆる声を参考にする
Audiolens は Nectar 4 と互換性があり、あらゆるボーカル サウンドのトーン マッチングを可能にします。ボーカルをリファレンストラックから分離し、ミックスの開始点を作成するための貴重な情報を取得します。


甘いハーモニーで
インスタントで簡単なボーカル レイヤー: Voices モジュールを使用すると、ボイス リードやハーモニック モーションを学習することなく、ボーカル プロダクション用の複雑なレイヤーを作成できます。希望のサウンドに似たプリセットを見つけて、好みに合わせて調整します。

ALM [上級]
瞬時に一貫したボーカル
ALM (Auto Level module) は、コンプレッサーに代わるインテリジェントで透過的な代替手段です。信号チェーンの先頭に配置すると、レコーディング エンジニアのように機能し、ボーカル レベルを簡単に管理します。ALM は、従来のコンプレッサーのような不要なアーチファクトを導入することなく、一貫した音量レベルを提供し、クリーンで自然なサウンドを提供します。


バッカー[スタンダード、アドバンス]
今日は誰があなたを応援しますか?
Backer モジュールを使用すると、メイン ボーカルの後ろに座るバックグラウンド シンガーを作成できるようになりました。8 つの異なるスタイルから選択するか、独自のアカペラをインポートしてサウンドをさらにカスタマイズします。さまざまな味のボーカリストを使ってデモを仕上げたり、アドリブ トラックを創造的に破壊したり、まったく新しいものを作成したりできます。 

*英語圏の言語でのみトレーニングを受けています


13 コンポーネント プラグイン [上級]
独自のチェーンを構築する
Nectar Advanced には、新しいプラグインの強力なスイートが付属しています。Nectar のパワーを DAW テンプレートに統合し、プロダクション内のすべてのボーカルに独自のカスタム チェーンを構築します。


ボーカルアシスタントページ
ヘルプはこちら
Vocal Assistant は、ボーカル ミキシングの詳細に迷うことなく、ボーカル制作のためのシンプルで役立つ決定を下すための広範なインターフェイスを提供するようになりました。

その他詳細は製品ページを確認してください。

Nectar 4の新機能について

大まかにいうと今回追加された新機能は以下のようになります。
  • NEWボイスで複雑なレイヤーを作成[エレメント、スタンダード、アドバンス]
  • NEW AI を活用したバックグラウンド シンガーをBackerで生成[Elements、Standard、Advanced]
  • NEW Auto-Level モジュールでダイナミックなボーカルを即座に管理[Advanced]
  • NEW Audiolensであらゆる音声を参照[Elements、Standard、Advanced]
  • NEWボーカルアシスタントを使ってみる[Elements、Standard、Advanced]
  • 追加の機能強化

ボーカルアシスタント機能



おなじみと通り、ボーカルトラックの音声をストリーミングして解析して、数秒待つとNectar 4のA!プロファイルに基づき提案されたエフェクトチェーンとセットアップが用意されます。メイン画面ではシンプルなノブが用意されており、それぞれのエフェクトパラメータをシンプルに統合したマクロコントロールのような使い勝手です。ボイスのシェーピングや激しさ、空間系(XYパッド)、ハーモナイズ、そして、ステレオ幅といったように、ボーカルのおおまかな方向性をこの画面でざっくりとコントロールできるようになっています。非常にざっくりですが、良く設計されていて、このノブを操作するだけでも、最適なボーカルの原型を作ることが出来そうです。(その後個別のモジュール画面に移動するというのもありですね。)端の電源ボタンはバイパス。Darkといったように声色や性格のプリセットも用意されています。

 Auto-Level モジュールによるオートレベラー

オートレベラーが用意されています。これはでWaves 「Vocal Rider」等でおなじみのオーディオのレベリングを自動で調整してくれる機能。こちらもオーディオを解析して、設定を提案してレベリングしてくれます。(オートレベリングの設定はMAutoVolume等のパラメータが充実したタイプの場合、コンプレッサーよりもパラメータが多く意外に適切な設定を見つけるのに悩む気がしないでもないので、とりあえずの設定の方針を提案してくれるというのは意外に結構便利だったりしますね。)「Tame Noise」機能は、ボーカルコンテンツの歌唱部分とそうでない部分を区別し、トーン要素のみをレベル調整しすることができる機能。こちらも製品の記載から判断する限りではAIによる学習に基づいているように思われます。これは音質にも少なからず関わってくるので、重要なところです。パラメータを見るとわかるようにこれはかなり内部アルゴリズムに依存する設計で解析によるアシスタント機能との連携が前提として設計されています。つかってみたところ提案が悪くないといった印象で割と自然にかかるので微調整で済みそうです。(技術力といったところでしょうか。Advancedのみの実装というだけあります。)わざわざ他のプラグインを立ち上げることなくこの機能が付いているというのは便利そうではあります。




Voiceモジュールについて



今回追加された新機能ボイスモジュール。これはWaves「Harmony」等を思わせるハモリ生成のためのモジュールです。例によってキーの解析機能等もついているわけですが、オクターブやユニゾンだけでなく、3度、などのハモリを生成可能。それぞれの声部のボリュームやチューニング、ピッチ等の他ステレオフィールド上で、ハーモニーの位置をセッティングすることもできます。



トップリードに対して上下移動することも可能。ボイスを選択するとそれぞれパンニングやゲイン等の個別設定ができるようになっています。


Backerモジュールについて


筆者としてももっとも関心を引かれることになった新機能としてはBackerモジュールがあります。これはAIに基づく合成音声によってバックコーラスを作ることができるという機能。それぞれキャラクターの異なる8人の歌い手のモデルが用意されています。(UIが非常にポップで好きです)ブレンド量や、高域を強調したり、周波数に癖をつけるToneだけでなく、フォルマントやピッチを変えることによってキャラクターを変えることもできます。



現在英語のみ対応ということですが、英語の歌詞やサンプルをトラックに使用する人にとっては出番がありそうな機能ですね。早速英語のボーカルで試してみましたが、洋楽でよく耳にするようなボーカルのバックシンガーが簡単に生成できてしまうという。実用性も十分ンで非常にリアルなので、注目の機能の一つです。



その他の機能


コンプレッサーモジュールについて

コンプレッサー。こちらについては使い方が至ってシンプルですが、ピークとRMSの切り替えはコンプレッサーモデルを瞬時に切り替えられるのは便利です。ソリッドステートやオプティカル、ビンテージ、デジタルといったように様々な性格のものが切り替えられることで、それぞれの性格に合ったものを手軽に吟味できるのはどちらかというとクリエイティブにボーカルを作っていく人にとってはその重要性が大きいかもしれません。それぞれのモデルになったハードウェアなどは明かされていないので、エミュレーションというよりは~風といったものですが、悪くないですね。

このようにモデルの中から選択することができます。


ディエッサーモジュールについて

ディエッサー。こちらも大変シンプルですが、RXモジュール等と比べて見た目も含んて使いやすさがあるように思えます。(仕組みがそもそも違うので何とも言えないですが。)ターゲットとする高域の周波数帯域を仕切りで区分して、スペクトルが表示されている画面でスレッショルドでぶつけていくというように非常にわかりやすさがあります。また、リダクションされる量がメーターで表示されるだけでなく、デルタリスニングまで完備されているのはついついうっかり削り過ぎていたなんてエラーを未然に回避できます。(筆者も長時間作業していると無意識レベルでも耳の精度にムラがでることを認識しているので確認することが多いです。)ここら辺の機能は歌唱だけでなく、音声処理でも選択肢の一つとしてありだと思います。






モジュレーション系。これは気にいればというところでしょうか。エフェクトチェーンの中に入れられるということで意味がありますが、モダンなモジュレーションが好きな場合は外部のプラグインに頼るのが良さそうです。とは言えワンボタンでエフェクトを変えられるのは便利。

EQ。Nectar 4のチェーンの途中に入れられるというところにも意味があります。



サチュレーションは視認性がなかなか良いですね。干渉される周波数帯域が色付きで表示されるというのは非常に具体的なイメージングをする上で便利と思うひともいるかと思います。ハイの周波数帯域を抑えることができるようになっていますが、ミッドやローを下げることはできないようです。また、テープ等様々なデバイスのサチュレーションをワンボタンで切り替えられるのは非常に良いところ。アナログサチュレーションはエミュレーションが個人的には好きなのですが、それを差し引いてもこの機能には作業上の有能性が感じられます。一般的なサチュレーションで想定される処理を想定したものということでしょうか。




Nectar 4にアップグレードすべきか

今回のアップグレードはおおよそ5年ぶりということで一大アップグレードともいえますが、使用してみた限りでは、音質を追求する音声処理のためのツールの強化というよりはクリエイティブなボーカルサウンド作りといったところにフォーカスされた機能が満載といった印象があります。(その傾向がUIにも反映されていると感じます。逆にお堅い機能として今回評価できるものとしては、筆者としてはAuto-Levelを注目しています。)そのため、エンジニアさんの中でも積極的に主張して音を作っていくタイプの方や、所謂ボカロPさんといった作曲からミキシングまでがクリエイティブな作業として一つながりになって全てを担当する人にとっては非常に注目に値するアップグレード内容だと思います。また、所謂歌い手さん、Mix師さんと呼ばれるようなフレッシュな音楽制作に関わっている人はもしかしたら今回追加された新機能に魅力を感じるかもしれません。また、アシスタント機能は非常に合理的に設計されているので、まずは方向性をざっくりと決めるという上でも多くの方に使いやすさを感じさせるようななかなか便利な機能だと思います。
イメージとしては(最近Wavesがボーカルプラグインに勢いがありますが)Antaresといったクリエイティブ志向のボーカルエフェクトに近い方向性で強化されている印象です。また、Advancedだけでなく、StandardやElementsにも新機能が思ったより多く追加されているので、それらを持っているひとにとっても恩恵を受けられるといった意味では、今回のアップデートは魅力的かもしれません。

現在ユーザーのiZotope製品の所有状況に応じて様々なアップデートのオプションが用意されています。

評価

ボーカル楽曲制作とミキシング、リリースまで行うような現代的な一つの制作スタイルに必要とされるようなニーズを反映させたプラグインになったと感じています。一方で強化された新機能のターゲットがモダンなスタイルにやや偏ってきたなあという印象があったりもします。そのため、感激する人がいる一方で中にはさほど恩恵を受けないという人もいるかもしれません。その意味でもやや評価がわかれそうなアップデートだと思います。オートボリュームは地味ですが今回の隠れた注目機能かもしれませんね。個人的にはこれから合成音声でも驚くような機能が出てきたら面白いなと思っていたりもするので、今後の展開にもさらに注目しています。

セール情報

リリースと同時に割引も行われているのでチェックしてみてください。