【Review】Techivation「M-Loudener」レビュー(ダイナミックレンジエンハンサープラグイン・使い方)
製品情報
音のポテンシャルを最大限に引き出す
M-Loudenerは、ダイナミックレンジと透明度を保ちながらラウドネスを増加させる究極のツールです。あなたのトラックにもっと大きなヘッドルームを簡単に作り出す準備をしましょう!
よりモダンでミニマルなグラフィックユーザーインターフェイス
M-Loudenerのユーザーインターフェースは、直感的で使いやすいように設計されており、初心者から上級者まで最適なツールとなっています。
ラウドネスとクオリティのパーフェクトソリューション
原音との整合性を保つ高度なアルゴリズムで設計されたM-Loudenerは、最小限の労力でオーディオトラックを強化するための理想的なツールです。このプラグインは精密で正確な結果を提供するように設計されているため、オーディオマスタリングやバス処理に最適なツールとなっています。また、個々のトラックでの使用にも最適で、特にパンチ力を強化したり、ミックスを切り裂くようなサウンドを作るのに効果的です。
主な特徴
- サウンドエフェクトコントロール
- ドライブコントロール
- ソフターモード
- スムーサーモード
- 最大8倍までのオーバーサンプリング
- 入出力メータ
- 差動式メーター
- セットドライブ
- マッチRMS
- ミッド/サイドコントロール
- ドライ/ウェットミックス
- プリセット
- 内部オン/オフスイッチ
- アンドゥ/リドゥオプション
- A/Bスイッチ
- スケーラブルなグラフィックユーザーインターフェース(GUI)
引用元:M-Loudener(公式サイト)
機能紹介
Techivation M-Loudenerは、Techivation Mシリーズの第一弾。ダイナミックレンジと明瞭度を損なうことなく、トラックのラウドネスを強化することを狙ったプラグインです。
メーカーによって想定されているM-Loudenerの主な利点の1つは、トラックのヘッドルームを増やすことができることです。これにより、歪みやクリッピングのリスクなしに、ミックスに多くの要素を追加することができます。この機能により、M-Loudenerはオーディオマスタリング、バス処理、個々のトラックのミキシングなど、様々なオーディオ処理に対応する汎用性の高いツールとなっているとのこと。また、M-Loudenerは、音にパンチ、重み、厚みを加えるのにも使用が想定されています。
各パラメータを解説していきます。
真ん中のサウンドエフェクトパラメータは、オーディオ信号のキャラクターと音色の質を形成するための重要なツールです。M-Loudenerが生成する特定の種類のハーモニクスを加え、サウンドに厚み、パンチ、重さを加えることができます。
サウンドエフェクトを適用すると、付与された分のゲインがあがり、ヘッドルームがわずかに減少する可能性があります。その対策として、プラグインが生成するハーモニクスの強さをコントロールし、ヘッドルームを増やしてトラックをサポートする「ドライブ」コントロールが用意されています。倍音の量を変えるので必然的に音色が変わります。これは余裕載るヘッドルームとダイナミックレンジを維持しながら、トラックのラウドネスをブーストするのに使います。
Sineウェーブの場合100%ミックス量でDrive -6.0Sound Effect0%の状態でも約一オクターブ上のみにハーモニクスが少し出ています。ここでEffectをフルで上げると倍音構成は変わることなく、原音とともに倍音の量が増えます。
SofterモードとSmootherモードについては説明が必要になります。
Softenerボタンは、M-Loudenerの効果をより穏やかで微妙なものにすることができる便利な機能。例えば、ベースサウンドやローエンドの多いミックスを扱うとき、あるいはサウンドの全体的なインパクトを損なうことなくトランジェントをわずかに滑らかにしたいときに特に便利。
また、Softner機能をオンにすることで、特定のタイプのオーディオでM-Loudenerを使用する際に発生する可能性のある歪みやクリッピングを防ぐこともできます。エフェクトの強度を下げることで、よりバランスのとれた自然なサウンドを作ることができ、オーディオソースの本来の特性を維持することができます。
Smootherモードトランジェントに対する効果の強さを減らすモード。SoftnerモードとSmootherモードを併用することで、より繊細で自然な効果を得ることができ、最終的なサウンドをより正確にコントロールすることが可能です。SoftnerモードはM-Loudenerの効果をより穏やかで繊細なものにし、SmootherモードはM-Loudenerのトランジェントへの影響を軽減するモードです。Smootherモードが原音と倍音全体を全体的に低めているのに対し、Softenerはスペクトルグラムでみてみると割と選択的に大胆に倍音に干渉しているようです。どちらも音の違いはわかるものの並べて聴かないと気づかないくらいには非常に微妙な差ですが、ゲインメーターをみると明らかに一定量下がっています。非常に滑らかに処理が加わります。同時押しも推奨されています。
スペクトルグラムによる解析
ここから先はデータとしての参考です。-18db sin 440hz Mix 100%でチェックしています。
①バイパス時
②Drive -6.0dB(最小値) Effect 0%
③Drive -6.0dB(最小値) Effect 100%
これについては補足が必要ですね。それぞれのピッチの量が減っているだけでなく、これまで出ていなかった高次倍音が付与されているのが分かります。
⑥ ④の状態でSmootherモードをON
こちらは量が減少しているものの③の状態と倍音構成自体は大きく変化していないようです。
⑦ ④の状態でSoftとSmootherモードを両方ON
スペクトルグラムもみてわかるように、合わせ技といったところでしょうか。
さて戻りましょう。
Mid/Sideコントロールは、MSそれぞれに適用される効果のバランスを微調整するパラメーター。サイドにハーモニクスを加えたいといったときなど、偏ってエフェクトをかけたい時に使用することで、ステレオイメージのバランスを調整することができるようになっています。
メータ機能も充実しています。Match RMSは信号のインプットとアウトプットの間に生じたゲイン差を一致させる機能。また、メーターは通常のOutputメータの他、Differenceメータ―が用意されており、インアウトのゲイン量の差をメーターで表示してくれる機能があります。下記画面がDifferenceモードのメーター。LetimixのGainmatchのメーターが縦になったものですね。
また、画面左のSet Driveモードは再生中にトリガーすることによってドライブ量を自動的に提案してくれる機能。 オーディオのピークがトランスファーカーブに適切な位置で当たるようにし、歪みを発生させることなく十分な効果を得るポイントを提案してくれる機能。
Set Drive機能は、オーディオのピークがトランスファーカーブに適切な位置で当たるようにし、歪みを発生させることなく十分な効果を得るポイントを提案してくれる機能。
注意すべき点は、オーディオが最も大きな音になっていないときに「ドライブを設定」ボタンをクリックすると、ドライブが大きくなりすぎて聴こえる歪みが生じる可能性があることです。そのため、歪みを避けるために、'Set Drive'ボタンを使用するときは、トラックの最も大きな部分を再生するのが鉄則です。
オーバーサンプリングは8倍まで対応。
まとめ・評価
Set Drive機能により、サウンドが大きく変化することのないポイントを探ることができるのがなかなか便利。Match RMSを使用せずに信号量をDifferentモードで確認すると、Smoother及びSoftnerモードをオンにすると信号全体に対してもゲインリダクションが行われていることが分かります。音の変化は非常に繊細です。また、ゲインを一致させて比較してみても分かるように非常に繊細な処理が行われていることが元の音源とエフェクト音源の音を比べてみるとわかります。このようにゲインをそろえて、Drive量も歪まない値にして聞いてみると非常に微細ながら、ハーモニクスの違いにより、音が煌びやかになっているのが聞き取ることができます。そのため、ゲインを抑えながら、ヘッドルームを稼いだ部分に聴覚上の存在感を加えるなりの調理ができるようになっているわけです。
このようにどちらかというとプラグインの設計からみてわかるように音を大きくダイナミックにするプラグインですが、歪みや音質の劣化を過度に避けようと設計されていることが分かります。そのため、マスタリング工程での微妙な調整にも非常に有用です。一方で、オーバーサンプリングにより、ドライブを多少過激に上げたとしても、ある程度のレベルまでは音楽性が保たれるといったところは重要なポイントになります。ラウドネスをがっつり上げるというよりもどちらかというと原音との音質と音の変化に神経質に調整しながら、コントロールすることで欲しい質感になるまで粘ることができる可動性のあるラウドネスプラグインとしての評価ができると思いますね。(歪みに目をつむって荒っぽくラウドネスを稼ぎたいのであれば、他のプラグインでもおおかたできることです。)
また、また、他のTechivation製品と共通する特徴でもあるのですが、M-Loudenerもまた同様に歪み寸前までアグレッシブにドライブを上げると非常につるんと丸みを帯びた独特の質感をもってトランジェントが変化し、歪みない音色に変わります。これはこのメーカーの処理の特色でもあり、非常に個性的な処理と変化なのでやや好みが分かれるところかもしれません。
ラウドネスというのは非常に聴覚的なので実際に確認したくなるところですが、個々の製品は無料で試せるようになっているのは大きいですね。
セール情報についての補足・時期など
頻度が多くありませんがセールが不定期に時々行われているだけでなく、どうやらログイン時に他のプラグインを所有していると割引される(条件や制度は非公表で謎です)ことなどもあるようです。また、バンドルが非常に安くなる傾向があるのでチェックしてみてください。
M-Loudener