【Review】UJAM「Finisher BOOST」レビュー(トランジションFXジェネレータープラグイン)
メーカー情報
Finisher BOOST は、どんなオーディオトラックやバスでも、ミックスと完璧に混ざり合うトランジションに変えることができるマルチエフェクトプラグイン。よくあるライザーなどのありきたりなサウンドに新風を吹き込み、楽曲のエナジーを極限までブーストするワンノブマシンです。BOOSTを使えば、複雑なエフェクトコンビネーションを一瞬のうちにバックグラウンドで処理でき、盛り上がりに欠けるサビ部分などに自然な起伏を与えてドラマチックな変化を加えることができる優れたパートナーです。
主な特徴
- 60 x マルチエフェクトモード
- 200+ x プリセット
- 2,4,8小節と簡単に尺を選べるループコントロール&フリップボタン
- 各モードのためにカスタマイズされたVariコントロール
- 直感的で使いやすいデザイン
動作環境
対応OS
- Windows 7 以降
- macOS 10.14 以降
- 64 bit(32 bit 非対応)
- Appleシリコン ネイティブ対応
必要スペック
- 8 GB 以上の RAM
- 850MB 以上の空き容量
- 1280 x 768 px 以上の解像度
- インターネット環境
プラグイン形式
機能紹介
UJAM「Finisher BOOST」はスウィープやライザーなどEDM等のセクションのトランジションでおなじみのエフェクトを作ることができるプラグイン。Finisherシリーズはエフェクトを一からデザインするのではなく、既にエフェクトチェーンで下準備のされたエフェクトライブラリともいえるエフェクトプリセットを選んで、それぞれに与えられたパラメータを調整して必要なサウンドにデザインしていくエフェクトプラグインシリーズ。
リアルタイムで生成することもあってFinisherシリーズとは若干使い方が異なります。オーディオ信号に反応してエフェクトが生成されるのでトラックに挿す必要があります。(ゼロから生成するシンセプラグインではありません。)
トランジションを生成する上でリアルタイムでMIDIコントロールしてトランジションの開始、スピード、動きをリアルタイムコントロールするマニュアルモードと一定のリズムで自動的に生成する2通りのモードが用意されています。
Finisherノブの一周が生成されるトランジションのループの長さを表しており、再生と同期して、ゲージが連動して動きます。マニュアルモードではFinisherノブを回すことによって、どのタイミングでトランジションを開始し、エフェクトのスピードをノブの回すスピードによって自在にコントロールできるようになっています。エフェクトを巻き戻したりすることも可能。左回りに回すとリバースされたエフェクトが使用できます。これはリアルタイムで演奏したい人向きですが、DAWで録音するなど非常に使い勝手の良い操作性です。Loopモードでは、2小節、4小節、8小節周期でそれぞれテンポ同期の状態でエフェクトがループします。これはセクションの移り変わりにエフェクトを入れたい人にとっては大変便利な機能。この場合Finisherノブは右回りと左回り(ダウンライザーなど)を選択可能。
ループコントロールはDAWのグリッドと同期してくれる簡単操作のスイッチ。選択したフレーズ尺(2、4,8小節)に合わせてどのビートを強調するか自動調節します。詳細なコントロールをしたいパワーユーザー向けのマニュアル調節も可能です。
Finisherノブの位置は小節の中でいつエフェクトが停止するのかを設定します。(3小節半で止まるなどの設定が可能。)また、便利なのが、Beatノブ。このノブはエフェクトのループポイントを前後にずらすことができる機能。ノブの位置が強調したい拍のポイントを示しているので、EDM等では小節の頭に強調点が置かれることが多いわけですが、小節単位のループをずらして4小節目の終わりの拍にアクセントが来るようにループをずらすことができるわけです。小節の場合ノブの一拍当たりのグリッドが細分化されるわけなのでこれによって、かなり細かくどのタイミングでエフェクトの頂点を充てるのか微調整できるわけです。(下記UIでは一小節目の一拍がハイライトされているのでそれに向かってトランジションが生成されるようになっています。)
その他のノブは他のFinisherシリーズと同様それぞれのエフェクトごとにことなるパラメータコントロールが用意されています。トランジェントに関わるものやサチュレーションに準ずるものまで。
エフェクトはライザー、インパクト、トランジションの3カテゴリーでそれぞれトラック、ドラム、楽器、ボーカルに適したプリセットが分類されて用意されています。一画面にコンパクトに収まるので、プルダウンで並んで出てきて見づらいといったこともないので良いですね。エフェクトの解説も出てきます。これ結構エフェクトのしくみを理解する上で助かります。
まとめ・評価
ライザーやスィープを合成によって生成するひとつのメリットはサンプルと異なり、楽曲ごとのテンポに同期した生成ができる点であり、ストレッチによる音質の劣化もありません。トランジションなどのジェネレータープラグインはこれまでもBoom Library「LiftFX」やAir Music Technologyの「Riser」等様々なメーカーがリリースしています。テンポ同期で生成される点ではBoom Library「LiftFX」と似ている点もありますが、Boom Library「LiftFX」はMIDI信号入力にトリガーされて反応するのに対し、Finisher BOOSTはLoopモードの場合トラックの小節拍における相対的なタイミングを指定して一定の時間でオートメーションを実行できる点にあります。
このプラグインのメリットはかなり細かいレベルでタイミングを調整でき、オートメーションが非常に楽なだけでなく、思った通りのタイミングで生成できる点。完全リアルタイムのマニュアルコントロールもできるので、電子音楽の制作に慣れている人にとってはかなり直感的に操作することができます。エフェクトもBoom Library「LiftFX」が割とオーソドックスで定番なエフェクトがそろっているのに対し、UJAMはシンプルなライザーやスィープなど定番を備えながらももうふたひねりしたエフェクトが多く用意されているので、強くインスタントな印象を受けるものはほとんどなく、エフェクト自体の質が高いものになっています。(リリース時期も差があるにせよ、Boom Library「LiftFX」よりも明らかにモダンな手の込んだものがそろっています。シーンによってはモダンが必ずしも良いとは限りませんが、一つの判断基準にはなるでしょう。)
綺麗なものからスペーシーなものは奥行きがあり繊細なものもあり、SF映画や往年の電子音楽研究所の作曲家による電子サウンドを思わせるものもあり、ダンスミュージックだけにとどまらず、映画音楽やシネマティックなシーンにもよさそうです。
ただし、手の込んだエフェクトも豊富にあり、バラエティーに富んでいる半面極端に狂ったような実験的で独自色の強いエフェクトが多いというわけでもないので、良い塩梅ともいえますが、どちらかというと使いどころ難しいものは少なく、実用的で商業的な指向を感じさせるところもあります。そのため、前衛的で尖った電子音楽を指向し、新しい音を求めにいくとやや物足りなさを感じる人もいるかもしれません。(とはいえ、実験風のサウンドもあります。ただし、どれもある程度使用シーンが想定できる範疇にあります。)
全体的にみるとオートメーション機能が大変優れており、リアルタイムトランジションコントロールできるのも直感的なので、非常に使い勝手の良さが際立っています。エフェクトもセンスの良いマンネリ化の少ない尖りすぎない絶妙にフレッシュな使いやすいサウンドがそろっているので、汎用性も高いといえるでしょう。
セール情報と最安値
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