Venomode「Phrasebox」レビュー(MIDI生成作曲支援プラグイン、MIDIアルペジエーター・使い方・セール情報)


Venomode「Phrasebox」レビュー(Midi生成作曲支援プラグイン(Midiアルペジエーター)・使い勝手等)

Venomode「Phrasebox」ですが、すごい人気があるようなので、さすがに気になって導入してみました。一部で使い方が難しいとの声もありましたので、どんなものなのかとより一層気になってました。詳しくレビューしていきます。

まずメーカー情報から。

 

Phraseboxは、これまでにない方法で再生を制御できるフレーズアルペジエーターです。DAWのようなピアノロールを使用すると、従来のステップアルペジエーターと比較して、タイミングや長さに制限のない、表現力豊かなレイヤードメロディーを作成できます。ピアノロールの音符は、音の高さの順序に対応しており、「特別な」音符(演​​奏される最も大きな音や最も静かな音など)を使用して、演奏する音を正確に制御できます。また、キーへのロックオプションを備えているため、転置されたノートがキーから外れることはありません。また、付属のコントローラーウィンドウを使用すると、MIDICCデータを楽器に送信することもできます。Phraseboxは生成オプションも備えているため、ボタンをクリックするだけで無制限の一意のフレーズを生成できます。

基本情報・使い方


「Phrasebox」は和音をフレーズに変えることができる優れた作曲プラグインです。といっても、アルペジエーターをはるかに超えていて、このプラグインだけで高度な作曲やサウンドデザインまでできてしまう超優れものの機能が備わっています。

仕組みとしては、DAW上のタイムラインと連動して入力されたMidi信号をプラグイン内の信号を元にフレーズに変換して再生できるプラグインです。

音が出ない等の混乱している声もあるだけにルーティングがやや厄介。ただしすばらしいことに、ここのメーカーはQ&Aに対応DAWのルーティングをそれぞれ説明されているのでまず困りません。基本はPhraseboxのインストトラックから鳴らす音源のトラックにMidi信号を送る流れになります。




シーケンサー画面


シーケンスは画面左に全体設定を変えられ、シーケンス数変えたり、1つあたりの音価を指定したり、それぞれ長さを変えられるあたりは同じ。
DAWのタイムラインと同期させているのであれば、シーケンスの終わりまで行くと最初に戻りループします。ワンショットもできるようです。


この特殊なシーケンサーではまず、1-8の数字のシーケンサーレーンがそれぞれ堆積されている和音の第1音-第8音に対応しています。そのため例えば3和音Cメジャーの場合、1=C、2=E、3=Gとなり、4から上の信号は音が鳴りません。(入力なし)その上のレーンは書かれた内容に該当する音を鳴らします。

ダイジェストで説明するとALLは1-8までの音を和音で鳴らし、Highは最高音、Quitetは設定したベロシティレンジの最低音を鳴らします。Lastは入力された最後の音。Fixは画面左Fixedで指定した1つの音程の音を鳴らし、Randomは1-8までの音のうちどれかをランダムで鳴らします。フレーズをアレンジしたいとき使えそうですね。
ここまでで、音価や同時に鳴らすことに制限がないので(あまり重ねるともちろんクリップします)相当自在に作れることがわかると思うのですが、まだまだあります。

フレーズは最大12スロットまで記録することができ、それぞれ独立しています。またフレーズのプリセットも楽器ごとに用意されています。そのため、コード進行が決まれば、プリセット適用でフレーズ作ることもできます。
プリセットも充実しており、面白いものも。ファンクベース音型から、アルベルティバスやバッハやベートーヴェンの有名なフレーズパターンも収録されています。


また、作ったパターンはプリセット保存が可能。後述のようにフレーズづくりはかなり複雑なことができるのでプリセットで読み出せるのは助かります。自分のオリジナルなフレーズパターンを作っておけば、コードを変えるだけでヴァリエーションをすぐ作れてしまうのです。






もはやおなじみサイコロマークはフレーズのランダム生成。ちなみに左画面Generationにてランダム性を制御できるのですがかなり高性能。Note Densityではどれくらい音を埋めるか、Note Lengthでは最大のノートの長さを指定できます。トランスポーズ等の項目にみられるChanceは起こりうる確率を制御できるので、かなりイメージに近い形でサイコロを振れます。ちなみにこのプラグインは各項目にカーソル充てると下に説明出てくるので親切。

Midiパラメータの詳細エディット


極めつけはシーケンサー下にあるMidiデータのパラメータ設定です。これがとてもすごい。簡単に言うとDAWのように各シーケンスのヴェロシティなどを調整できるのです。ヴェロシティの設定に関しては通常のDAWと同じ。

Transposeがハイライトです。なんと上下合わせて4オクターブの範囲でシーケンスノートを移調できるのです。そのため、実質あらゆるフレーズを作れてしまいます。もちろん和音自体を変えるのはプラグインの仕組みからしてあまり合理的ではなく(元の入力されたMid和音自体を変えるべきです)、和音やフレーズの中に非和声音を含めたりすることがメインになります。移調したシーケンスは移調した方向に↑マークがつきます。

制限はないのでポリモードのような実験的なこともできます。ちなみにトランスポーズの際にスケール内に収まるようにキーロックをすることもできます。その左にあるオクターブでは上下計8オクターブの移調が可能。Transposeと組み合わせれば、鳴らせない音はありません。



そしてその他のピッチベンドなどの項目はDAWと同じように折れ線でオートメーションを書くことができます。スポットを追加して描画していくのでかなり書きやすい。これを組み合わせるとフレーズがかなり複雑で詳細に作ることができてしまうのです。



その他の便利機能

その他の機能としては、各シーケンスレーンのノートは16チャンネルにルーティングしてそれぞれ独立して出力できる機能が付いています。つまり、スケッチをしてから音色を割り当てる等ができます。オーケストレーション的アプローチ。

Midiインポート&エクスポートによるMidiフレーズをDAW上にエクスポートできる機能が最強。これはPhrasebox内で演奏するフレーズを入力した状態で、Midiファイル(DAW上のMidiデータではなくデータファイルです)をプラグイン内にドラッグアンドドロップし、さらにその画面から再びDAWのトラックにエクスポートすることで、元のMidiデータをPhraseboxのプログラムしたフレーズに変換してDAWに出力できる機能です!これはかなり便利です。
Midiデータはこのプラグインの特徴から純粋に和音進行になっているものが相応しいです。分散していたり、アルペジオなどになっていると和音の堆積をソフトが読まずに1音とみなされ、フレーズが思うように作れないです。
ちなみにPhraseboxトラック上にあるMidiデータをのフレーズに変換するには、ルーティング先の音源のトラックを録音すればフレーズになったMidiデータが生成されます。そのため実は部分的にPhraseboxで作って、細かいところをDAW上の出力されたMidiデータを調整なんてこともできます。

他プラグインとの重ね技


そして使っていて秒で気づいたのですが、このソフトとめちゃくちゃ相性が良いプラグインがPlugin Boutiqueの「Scaler 2」です。
「Scaler 2」の詳しい説明は省きますが、「Scaler 2」はコード進行をプラグイン内で作り、エクスポートできるので、「Scaler2」でMidiで和声進行を作る→Phraseboxのトラックで使うのフローを経ることでオリジナルのフレーズが速攻で作れてしまいます。しかも、前述の通り、「Phrasebox」では非和声音も使えるので実質作れないフレーズはほとんどありません。相性が良すぎるので、一緒に持っておくとかなり強いです。

また、MidiサンプラーのSongwish「reMidi」ともなかなかな相性です。(参考)


あちらはMidiデータをプラグイン内でトランスポーズ、スライス、再生速度等の変更ができるので、コード進行のデータを持っていれば、好きな部分を切り取って、加工してPhraseboxのトラックに出力することでかなり効率的にフレーズづくりに専念できます。

総合評価


「Phrasebox」音楽理論を知らなくてもコードがあればフレーズを作ることができ、感覚で音を並べられるので大変便利ですが、熟知している人にとってはかなり強い武器になります。8和音まで対応しているので、オルタード系やコンビネーションディミニッシュなどにまで対応できる強い味方。
そのため、作曲効率化ができるソフトではありますが、単純化したり手を抜くというプラグインではないので(もちろん手を抜くこともできます^^)、制作を効率化しながらもしっかり制作したい人にこそおすすめできます。初めての人から上級者まで幅広く使える奥の深いプラグインです。

ジャンルとしては、ポピュラーミュージック全般のバッキングに対応できる汎用性があります。これだけで機能上の制限を受けずに1曲の伴奏の90%は作れます。バッキングのみならず、単純な左手伴奏と右旋律等であればピアノソロフレーズも書けます。(ある程度複雑なものになれば、普通に作った方が楽だと思います。)
バッキングまたシーケンスをループできるのでダンスミュージックにも最適解です。Midiを扱うもののモジュレーションやピッチベンドなども細かくいじれるので、クリエイティブな電子音響のサウンドが作れます。

現状このプラグインにさらにほしい機能とかは見当たらないくらい完成度の高いプラグインです。機能だけでなく設計もすばらしい。ピアノロールではなく、和音構成音をシーケンスレーンにしているあたりがめちゃくちゃ便利。直感的に作って、後で細かいところ移調すればよいので大変合理的です。

総合評価としては、恐らくMidi生成系のプラグインの中ではトップクラスのカスタマイズ性と創作性、利便性を備えており、最もおすすめできると思います。オーディオに比べて便利なMidiのツールはまだまだ発展途上なのでかなり貴重なプラグインです。

私はセオリー側の人間なのでこうしたプラグインはかなり鋭く見てしまうのですが、いろいろなニーズの人が使い倒せるのでおすすめです。(ジャンルは違いますが個人的にはScalerより制作の手が入れられるので好きです)

セール情報

セールをすることがあるのでチェックしてみてください。セール頻度としては多くもなく少なくもなくといったところ。底値としては為替による違い等はありますが29ドルを前後するあたりです。