AAS「CHROMAPHONE 3」レビュー(アコースティックオブジェクト・シンセサイザー(パーカッション物理モデリング音源)、新機能、使い勝手、前ヴァージョンとの比較等)

AAS「CHROMAPHONE 3」レビュー(アコースティックオブジェクト・シンセサイザー(パーカッション物理モデリング音源)、新機能、使い勝手、前ヴァージョンとの比較等)

パーカッション物理モデリング音源AAS(Acoustic Applied Systems)「CHROMAPHONE 2」はだいぶ前から使用していたのですが、この度3にヴァージョンアップしたとのことで導入してみました。ということでAAS「CHROMAPHONE 3」を詳しくレビューしていきたいと思います。

まず、初めての人向けの紹介から。

基本情報


AASの中で特に人気が高いともいわれる「CHROMAPHONE 」の基本的な情報を簡単にまとめると、パーカッション物理モデリング音源等といわれていますが、かなり語弊があり、
叩いた音をモデリングした音源なので、パーカッションにとどまらず、ギターやドラム、ピアノ、ハープ、マレット、鐘、パッド、オープンチューブ等様々なタイプの音色をモデリングすることができます。

というのもマレット、プレート、ドラムヘッド等、計8の素材プリセット(マニュアルで素材を設定することも可能)の共鳴体の硬さやエンベロープ、各種エフェクトパラメータや叩くポジション等を設定することができるので、様々な楽器を再現できてしまうのです。

そして、2つの共鳴体をブレンドできるので、無限に近いパターンの楽器を再現することができます。後は己のサウンドエディットスキルですね。

そのため、音の多さという面ではどちらかというとシンセに近いイメージですが、通常のシンセのモデリングと異なり、かなり実物の質感を再現したサウンドが鳴ります。


さて、本題に入ります。


まず、この新しいヴァージョンで目につくのがUIの大幅な変更。180°イメチェンですね。UIは4枚からなり、ページ数が増えたように見えますが、2と比較して数倍使いやすくなっています。

わかりやすく言うならば、機能ごとに整理され、シンセサイザーのUIような操作性に近づいたといえます。

以前のヴァージョンでは画面が小さく結構操作しにくかった印象があったのと、音源探すのもプルダウン式で操作性はいまいちでしたが、今回の変更により、スクロールで探せたり大変スムーズに。新しいヴァージョンでも軽さは健在。


懐かしの(?)CHROMAPHONE 2のエディット画面。パラメータノブが小さく、結構いじりにくかったです。

ここから、新機能を中心にみていきましょう。

ホームビュー

モジュレーション、音色、エンベロープ、エフェクトなどの主要なサウンド特性にマクロがマッピングされているホームビューは、気を散らすことなく、のんびりとしたブラウジングと微調整を体験できます。
「CHROMAPHONE3」のホームビューは4つのマクロが用意されており、それぞれMidi Learnできます。

マクロパラメータの変化量をリアルタイムで調整できるので、コントローラーのノブに割り当ててプレイするパフォーマンスに最適化された画面ということでしょう。ちなみにホーム画面のマクロはレイヤー共通のマクロで、レイヤーごとに用意されているマクロを一括してパラメータを動かせます。



新しいファクトリーライブラリ

新しいプリセットが421追加されました。2までの676のサウンドを足すと1000近くのプリセットに。巨大なライブラリになってます。

また、Chromaphone2ライブラリは全てリマスターされているとのこと。一貫したゲインステージ、ユニティゲインエフェクト、より優れたダイナミクスを再考しただけでなくChromaphone 3の新機能であるマクロプリセットも用意されています。

既存のサウンドがどう変わったか説明するのは難しいですが、全体的に音に迫力(≒太さ)が出て、空間を広く効果的に使った良いミックスになっている印象。全体的にソロで鳴らしても通用する音場感とバランスになりました。


そして、大きな変更点でもあるのが、ファクトリーライブラリーがデータベース型になったこと。

パック、サウンド、カテゴリ、およびクリエーターのビューを備えたChromaphone 3の新しいブラウザーは、探しているサウンドを効率的に見つける方法を提供します。
2までのサウンドと新規サウンドを分けて探すことができるだけでなく、プラック、アルペジオ等音色ごとのカテゴリー分けやアーティストごとに探せます。名前順や音色順等ワンクリックで、ソートを変えられるのはめちゃくちゃ便利。

ちなみに上部中央のプリセットが表示されているバーは全画面共通でブラウザ画面の開いている階層にあるプリセットをプルダウンできるので画面を切り替えることなく、音色変えられます。これまた便利。



また、アコースティックかシンセサウンドかでも分類できます。お気に入り機能も搭載。

私的な見解ではどんなに優れたシンセであってもデータベース性の考慮されていないシンセサイザーはやはり合理的ではないため使いにくい場面があり、わかっていない設計だと思ってしまうのでこれはかなりありがたい機能です。




新しい2ボイスマルチティンバー


Chromaphone 3は、2つの独立した音色(スタックまたはスプリット)を組み合わせて、パフォーマンスにやさしく、テクスチャーが豊富で、広々としたサウンドを作成します。

 




かなり注目したい新機能。レイヤー化されたので、かなりサウンドに多様性を持たせることが可能に。ただでさえクリエイティブなシンセがさらにカラフルに。マレットにドラムヒットをレイヤーさせたり、あるレイヤーはパーカッシブに、もう一つのレイヤーをパッド風にするなど自在。スプリットで2つの音色を扱うことも可能。レイヤーコピーなどもできます。1つが2つになるだけでこうも違うのかと感動です。

その他のパラメータは次に紹介する新機能マクロを除きCHROMAPHONE 2とほぼ同様ですが、ノブ大きくなって使いやすくなりました。見た目変わりましたがシーケンサーも同じです。

(比較用)




新しいマクロ機能

Chromaphone 3は、ユーザー定義のMIDIコントロールに応答するレイヤーごとに4つのパフォーマンスマクロを備えています。すべてのサウンドは、モジュレーション、音色、エンベロープ、およびエフェクトモーフィングの割り当てを備えており、リアルタイムで再生して表現力と音の次元を向上させることができます。



これは新機能の中でかなり大きいです。

レイヤーごとに合計4つのマクロを搭載しており、4スロットに楽器に関するパラメータを割り当てられるのでかなり複雑なサウンドが作れるようになっただけでなく、
リアルタイムで動かすことで、より自由度の高い即興サウンドが実現できるようになりました。

ただでさえデモ音源がクレイジーなCHROMAPHONE の印象でしたが、カオスで最高にクレイジーなサウンドも可能に。アンダーグラウンドなワブルベースのようなサウンドも。

なお複数のパラメータを同時に動かすと音源複数立ち上げていたりするとやや動作がもっさりします。




このように共鳴体の設定から、クロック、LFO等、あらゆるパラメータを同時に動かすことができます。ただでさえクリエイティブといわれていたCHROMAPHONE ですが、この機能によって、ほとんど制限のないサウンドづくりができます。上記2つが今回の目玉グレードアップ機能です。



拡張されたマルチエフェクトモジュール


Chromaphone 3のマルチエフェクトモジュールは、リバーブ、イコライザー、コンプレッサー、トレモロ、ギターアンププロセッサーを搭載し、さらに完全性を高めています。さらに、5つのエフェクトスロットは任意の順序で再配置できます。
2ではカスタムエフェクトの2つしか動かせなかったのに対し、今回はエフェクトスロットをドラッグで移動できるようになったので、エフェクトチェーンの変更がスムーズになりました。また、ギターアンプが追加されました。

そして、それぞれのレイヤーにエフェクトモジュールがあるだけでなく、マスターエフェクトも用意されています。マクロのおかげで、かなりサウンドを動的にいじれるようになりました。

新機能によるサウンドの印象

まず、デモ音源を聴いて思った第一印象が、AASらしくないシンセサウンドも鳴ってる!と思ったところですね。サウンドがワブルのようにうねっていたり。毎度おなじみファンキーなお兄さんが動画に出てこなかったあたりから大分衝撃を受けたのですが。←

AASというとエクスペリメンタルなところにフォーカスが当たりがちですが、かなりキャッチ―なシンセサウンドが鳴っていてびっくりしました。(もちろん今までのサウンドは健在。)

簡単に言うとサウンドの幅がかなり広がりました。マクロの追加と2レイヤーになったのが相当大きいです。これまでは、やや素朴なサウンドが多い印象でしたが、音色を重ねることでニュアンスの豊かなサウンドづくりができるようになり、シンセサイザーとしても大変優秀な立ち位置にきているのではと思います。



そう、これまでは、音の持続するサウンドメイクがややシンプルになりがちだったのですが、かなり細かいところまで作れるようになりました。よってよりクリエイティブに。

それだけでなく、レイヤーも備わったので純粋な楽器の物理モデリングとしての精度もかなり上がっています。ドラムとかマリンバあたりはかなり豊かな響きになり、エディット次第ではリアルさが望めます。

総じて、ヴァージョンアップによって複雑なサウンドメイクができ、よりリアルに楽器も鳴らせるとっても汎用性の高いシンセになりました。パフォーマンスを行う人にとっても最高に創作意欲のわくシンセサイザーです。

2を持っている人のグレードアップも全然ありだと思います。使っている印象としてはサウンドメイクが多様化していることもあり、新しいシンセの印象。全く別物のサウンドづくりができるようになったので。

現在新規入手の他、アップグレードもかなりお得になってます。

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