Artistry Audio「ORIGIN X」レビュー(アップデートされた新機能、感想、使い勝手等・9/30更新)
先日リリースされたArtistry Audio「ORIGIN X」気になって仕方がなかったので導入してみました。結論から言うと最強です。さらに先日のアップデートでオリジナルサンプルのインポート機能が追加されました。
基本的特徴
ORIGIN Xは、世界クラスのループライブラリを備えたダイナミックループおよびエフェクトエンジンであり、あらゆるスタイルの音楽制作に最適です。Native Instrumentsの業界標準のKONTAKT PLAYERプラットフォームを搭載したORIGIN Xは、メロディックループやリズミカルな要素をレイヤー、スカルプト、自動化するまったく新しい方法を導入します。
ORIGIN Xは、シネマティック、シンセ、インダストリアル、トラップ、ハウス、アンビエント、EDM、ソウル、ファンク、テクノ、ブレイクビートなどのすべてのものをシームレスに融合して、あなたの作品を新たな高みへと導くパワーハウスループエンジンを実現します。2,000を超えるループとプリセットが、定義に反するオーディオエンジンとペアになっています。
特徴
- 1,400以上のループ、無数の音の組み合わせ
- モダンなサウンドデザインのための75のキットを備えた2層ループエンジン
- 数百のプリセットオプションを備えたカスタマイズされたエフェクトスイート
- サウンドを自動化するための125以上のモーションプリセット
- 瞬時にインスピレーションを得るための完全に「ランダム化可能な」インターフェース
- Native InstrumentsのNKS®およびMASCHINE対応
追記
アップデートによる新機能
アップデートによる新機能としてサンプルのインポート機能が追加されました。いままでは全てサンプルライブラリに含まれたサンプルしか扱うことができなかったのですが、新たにロード用のnkiパッチが追加されました。
これは2レイヤーそれぞれに自分のサンプル(WAV、Mp3等は不可)をドラッグアンドドロップでロードできてしまう機能です。「empty」と書かれたエリアに投げ込めます。
音源の時間制限は不明ですが、試してみたところ3分くらいなら余裕でロードできます。なので基本的に制限はないようなもの。調子に乗って1時間の音源(約1GB)を突っ込んでみたところ、何度もフリーズしながらロード自体はできましたが、まともに動かなかったです。そこまでハイスペックなPCではないというのもあるのですが。
この機能の何がすごいかというと異なるサンプルをレイヤーしたり、同じサンプルをレイヤーして異なるリミックスをするということも簡単にできてしまうというところですね。自作のインスト曲を突っ込んでEDM作るなんてこともできます。
そして以下の紫色の1オクターブの音域に1パッチにつき12組、計24種類の音源がロードできてしまうのです。その他の機能は今までと同じなので無限に音色やサンプル素材を持ってきて制作をすることができます。このプリセットももちろん保存できます。
ただでさえ汎用性の高かった音源がこの機能によって、最強の機能を備えたサンプラーとなりました。
なかなかこれを超える使い勝手と機能を備えたインストルメントもないと思います。1週間のアップデート半額イントロセールしているので、私的には絶対持っておくべき音源だと思います。
使い勝手など
Artistry Audio「ORIGIN X」は簡単に特徴を言うならば、ループ素材によるスライサー機能が搭載されたシンセサイザーなのですが、使ってみると思いの外いろいろな機能がついており驚きました。導入する前に一応出回っているYouTubeの動画とか見たのですが、使ってみてわかるのはすごい機能のうち5%も紹介していないですね。
まずプリセットをロードして使うことになるのですが、一つのプリセットにつき2つのレイヤーとそれぞれ12のループが用意されています。
それぞれ、C5-C-6-の1オクターブずつ計2オクターブににアサインされています。
プリセットが多すぎるので全部は調べてはいないので何とも言えませんが、C=ドラム、C#=ベース、○=ストリング、B=アルペジオ、〇=コード等のように、プリセットごとに一般的な音色カテゴリが網羅的にアサインされている模様。
Stack機能でキースイッチを統合することが可能。(同時に鳴らすということ)
低いところのオレンジ色の箇所は再生速度を半分、等速、倍速に変えるスイッチになっています。
その上のC3-からの箇所はエフェクトスイッチになっております。スタッターやテープエフェクト等のエフェクトプリセットがアサインされており、キースイッチ設定によって自分で好きなプリセットを選んでカスタマイズできてしまいます。そのため、ライブにも最適の至れり尽くせり。
さらに、キースイッチを切り替えてトランスポーズできるキースイッチも用意されています。
すごい機能その1. スライサー
次に肝心のスライス機能。波形の下にあるリバースなどのスイッチやノブは波形自体をいじるノブです。また、波形の切り取る箇所をDAWのように指定することができます。そして下のUIエリアではシーケンス上のトリガーによってさらに波形の再生をどのようにするか自分でカスタマイズすることができます。(シーケンスによって分割されたサンプルの再生順)
上向きのシーケンスは順次進行、下向きのシーケンスは逆再生になっており、波形のここまで進んでもどってからさらに進むといったように通常は切り貼りが必要な動作がこれ一つでできてしまう優れもの。(Directモード)さらに、様々なシーケンスモードが搭載されており、下向きのシーケンス時にサンプルをリバースさせたり、4回繰り返す等多種多様。シーケンサーは左進行、右進行、行って戻る等基本となる進み方を設定できます。
また波形の部分の好きなところをあっちこっち飛び回って再生することもできたりも(Lopp Remixモード)。さらにシーケンス数とシーケンスの対応小節数を設定できます。また、レイヤーごとに独立してこの2つのモードを設定できます。
プリセット
ジャンルもシネマティックからアンビエント、スタッター系のハードなものから、シンフォニック、エレクトロニクス、サウンドデザイン、チルまで多種多様。音色自体は時代のアップデートに乗っかっているような古くないサウンド。ただし、スライサーや後述のエフェクト機能などによって斬新なものにまで化けます。
さらに、すでに作っている際に別のプリセットをロードしたいと思った時、変えたくないエフェクトやサウンドなどの設定をロックすることができます。これはサンプルを複雑に切り刻む等の長い制作工程の余地があるプラグインだけあってとっても嬉しい。またサンプルのキーを設定することもできます。


最初は正直、すごそうだけど結局ループ素材ベースだから、ループを少しいじれるくらいで作れる音楽限られそう、とか思ってましたが、全然そんなことなかったです。
ここまですごい機能解説していてあれですが、この音源、純粋なループ再生としても音源数やレパートリーが多いだけに結構使えるのでお得感あります。ループといっても、長いフレーズ以外にパッド風のものやFX風なものも多いので、シンセの様に使うこともできるんですね。
さらにプリセットにはエフェクトプリセットも用意されており、即戦力の複雑なエフェクトプラグラムをすぐロードして読み込めます。

すごい機能その2. エフェクト
最後にエフェクト。これまたすごいです。コンプフィルター等の基本エフェクトに加えLofi、Tape効果、Modなどの機能が備わっているおり、各パラメータも豊富なのでかなり細かくサウンドをいじることができてしまい、元々のサンプルがイメージできないような別物に変えてしまうことができます。

そして極めつけはシーケンサーによるエフェクトトリガーによるオートメーション機能。
なんと最大4つまでGateやLofi、Mod、Panなどのパラメータをそれぞれシーケンサー上でオートメーションを描くことによって、エフェクトの聴き具合を完全制御できてしまうのです。
先ほどのシーケンスと同様にシーケンス数や小節数、順次反転等の再生方法を設定することができるので、完全にこれ一つで本来複複数のエフェクトレーンによって作るような複雑なサウンドデザインができてしまいます。
また、Sliceパラメータを自動化するとシーケンサーのスピードを変えられます。これ結構すごいことで、時間軸に揺らぎを生じさせられるんですね。
惜しいところ
あったらよかったなと思うところを最後にまとめます。
まず、鍵盤ごとに音色がアサインされているのですが、
実際にMixするとなると1トラックにつき1音色にするのが妥当だと思うのですが(恐らく鍵盤ごとのマルチ出力はできないと認識してます、要確認)、その前提からかスライサーのシーケンサーは一つしかないです。レイヤーごとに異なるシーケンスパターンを使うことはできません。
マルチ出力があったらなあと思いました。ただ、トラックごとに立ち上げるとそれぞれに複雑なオートメーション書くともちろんめちゃくちゃ重くなったので妥当かなとも思います。
まとめ
パンチ、音の厚み: ★★★★★
サウンドの質感、素材感: ★★★★★
聴きなれたサウンド : ★★★★★
サウンドメイクの可能性: ★★★★★
使用頻度: ★★★★★
機能の理解のしやすさ :★★☆☆☆(機能がかなり多い)
動作の軽さ :★★★★☆(重くはないです)
コスパ :★★★★☆
プリセットのバラエティー:★★★★★
汎用性 :★★★★★
特徴:電子音ベースのジャンルを幅広く網羅したループライブラリ、自由にカスタマイズできるスライス機能、エフェクトの複雑なオートメーション機能、多機能でカスタマイズ性に優れているため、幅広いサウンドデザインが可能
おすすめできる人:EDM系の制作の人全般、チル系の穏やかなサウンドによる創作をする人、商業芸術問わずサウンドデザイン、いろいろなジャンルを作る人
(というのもRigid Audioの言うメーカーがループ素材のKontakt音源を看板として多数作っており、私もいくつか持っているのですが、もちろんあちらも多機能で魅力的な製品がありますが、このパラメータいじりたいってところがいじれなかったりもするので。最近はそこらへんが改良された製品もあり(「Sodium」等)結構好きですが、Artistry Audioはそれとは比べられないくらいその数倍上を走っています。)